5大総合商社の中間決算を横並び比較|増益率・粗利率・営業CFと業界KPI【2027年3月期】

結論:2026年4~9月の5大商社は全社で増収・最終増益。ただし「利益の増え方」と「現金の動き」は大きく違う。三菱商事は純利益+74.2%、三井物産は+35.7%に対し、売上収益では三井・丸紅が23%台で伸長。一方、三井・伊藤忠・住友商事の営業CFは前年同期より減少。資源価格、売却益、持分法、税効果、運転資金を区別すると差が分かる。

比較条件:2027年3月期中間(2026年4月1日~9月30日、前年同期は2025年4月1日~9月30日)、5社ともIFRS連結。最終発表:2026年11月4日(三菱商事14時)。住友商事は11月2日発表。金額は原則億円、元データは短信の百万円単位。率と前年差ppは元の百万円単位から再計算した。速報の「全社比較」で、後日訂正がある場合は再確認する。

目次

1.主要財務の横並び比較(前年→当期/前年比)

2027年3月期中間(2026年4~9月)のIFRS連結。実額は億円、EPSは円。表の列は5社、行は同一の財務項目。収益の総額・純額の違いがあり、金額・利益率を同条件の事業効率ランキングとみなさない。

比較項目 三菱商事
8058
三井物産
8031
伊藤忠商事
8001
丸紅
8002
住友商事
8053
売上収益(億円) 86,378.43→104,104.23
前年比 +20.5%
67,591.15→83,220.27
前年比 +23.1%
72,491.59→79,297.47
前年比 +9.4%
42,033.66→51,801.28
前年比 +23.2%
35,371.87→39,185.61
前年比 +10.8%
売上総利益(億円) 7,064.55→9,735.56
前年比 +37.8%
6,187.27→7,375.85
前年比 +19.2%
12,096.04→13,166.50
前年比 +8.8%
5,573.52→7,037.61
前年比 +26.3%
7,066.56→7,682.98
前年比 +8.7%
営業利益(億円) 同一表示科目なし/推計不可 同一表示科目なし/推計不可 3,541.40→4,131.88
前年比 +16.7%
1,264.19→2,047.26
前年比 +61.9%
同一表示科目なし/推計不可
税引前利益(億円) 4,584.72→8,158.38
前年比 +77.9%
5,466.36→7,095.39
前年比 +29.8%
6,619.59→7,034.69
前年比 +6.3%
3,655.43→4,177.73
前年比 +14.3%
3,724.01→3,449.59
前年比 −7.4%
親会社帰属利益(億円) 3,557.96→6,196.96
前年比 +74.2%
4,237.33→5,748.62
前年比 +35.7%
5,002.80→5,804.72
前年比 +16.0%
3,054.97→3,380.27
前年比 +10.6%
3,012.35→3,478.65
前年比 +15.5%
基本EPS(円) 91.87→169.21
前年比 +84.2%
147.41→202.88
前年比 +37.6%
70.84→83.06
前年比 +17.3%
185.18→207.58
前年比 +12.1%
62.28→73.35
前年比 +17.8%
営業CF(億円) 4,280.25→9,912.76
前年比 +131.6%
4,287.11→2,234.01
前年比 −47.9%
6,092.45→2,931.75
前年比 −51.9%
2,114.06→2,646.65
前年比 +25.2%
2,621.64→1,305.12
前年比 −50.2%

主要な率の横並び(前年→当期/前年差pp)

比較項目 三菱商事
8058
三井物産
8031
伊藤忠商事
8001
丸紅
8002
住友商事
8053
売上総利益率 8.18%→9.35%
前年差 +1.17pt
9.15%→8.86%
前年差 −0.29pt
16.69%→16.60%
前年差 −0.08pt
13.26%→13.59%
前年差 +0.33pt
19.98%→19.61%
前年差 −0.37pt
営業利益率 短信に同一科目なし/比較不可 短信に同一科目なし/比較不可 4.89%→5.21%
前年差 +0.33pt
3.01%→3.95%
前年差 +0.94pt
短信に同一科目なし/比較不可
税引前利益率(参考) 5.31%→7.84%
前年差 +2.53pt
8.09%→8.53%
前年差 +0.44pt
9.13%→8.87%
前年差 −0.26pt
8.70%→8.06%
前年差 −0.63pt
10.53%→8.80%
前年差 −1.72pt
親会社利益率 4.12%→5.95%
前年差 +1.83pt
6.27%→6.91%
前年差 +0.64pt
6.90%→7.32%
前年差 +0.42pt
7.27%→6.53%
前年差 −0.74pt
8.52%→8.88%
前年差 +0.36pt
営業CFマージン 4.96%→9.52%
前年差 +4.57pt
6.34%→2.68%
前年差 −3.66pt
8.40%→3.70%
前年差 −4.71pt
5.03%→5.11%
前年差 +0.08pt
7.41%→3.33%
前年差 −4.08pt

三菱商事・三井物産・住友商事は営業利益を今回の短信で同一科目として表示していないため非開示と記し、営業利益欄に税引前利益を代入しない。利益定義・EPS分割調整・CF分類の違いを考慮する。

5大商社の増収率・親会社利益増益率と売上粗利率を比較した図
比較図①:増収率・純利益増益率・粗利率。営業利益率の5社単純順位は付けない。

2.なぜ同業で利益の伸びが違うか

三菱商事(8058)

資源収益の改善に加え、事業売却・再評価や連結範囲変動が最終利益に寄与。営業CFの急伸を全て継続営業キャッシュ創出としない。 連結売上収益は前年同期比 +20.5%、親会社帰属利益は +74.2%。粗利率は 8.18→9.35%。持分法利益と現金回収の時点差も確認する必要がある。

三井物産(8031)

銅価格や資源投資の回復、事業売却・再評価の効果が併存。営業CFは減少する一方、運転資本等を調整した会社定義の基礎営業CFは増加。 連結売上収益は前年同期比 +23.1%、親会社帰属利益は +35.7%。粗利率は 9.15→8.86%。持分法利益と現金回収の時点差も確認する必要がある。

伊藤忠商事(8001)

持分法投資利益の増加が寄与する一方、前年の有価証券関連利益の反動がある。純利益増加と営業CFの大幅減少を同一視しない。 連結売上収益は前年同期比 +9.4%、親会社帰属利益は +16.0%。粗利率は 16.69→16.60%。持分法利益と現金回収の時点差も確認する必要がある。

丸紅(8002)

銅・アルミ・原料炭など価格面が金属事業を押し上げた一方、食料・アグリや前年の一過性利益反動で会社全体の最終利益増益率は約11%。 連結売上収益は前年同期比 +23.2%、親会社帰属利益は +10.6%。粗利率は 13.26→13.59%。持分法利益と現金回収の時点差も確認する必要がある。

住友商事(8053)

税引前利益は減少したが、ニッケル事業売却に関係する法人税費用の戻入等により最終利益は増加。税効果を恒常的な営業収益とみなせない。 連結売上収益は前年同期比 +10.8%、親会社帰属利益は +15.5%。粗利率は 19.98→19.61%。持分法利益と現金回収の時点差も確認する必要がある。

3.取得可能な業界固有KPI

資源・非資源、持分法、独自基礎CFなど公式開示から取得可能なデータを整理。ただし会社ごとのセグメント定義は同一ではないため、同名の事業利益をそのまま順位比較できない。

比較項目 三菱商事
8058
三井物産
8031
伊藤忠商事
8001
丸紅
8002
住友商事
8053
持分法投資利益(億円) 2,368.51→2,879.88
前年比 +21.6%
2,523.17→2,921.83
前年比 +15.8%
1,602.39→2,305.02
前年比 +43.8%
1,597.33→1,987.86
前年比 +24.4%
1,595.96→1,658.61
前年比 +3.9%
金属・資源事業利益(参考、億円) 466.00→1,358.00
前年比 +191.4%各社の開示範囲は異なる
1,143.00→1,397.00
前年比 +22.2%各社の開示範囲は異なる
未取得(0ではない) 522.00→894.00
前年比 +71.3%各社の開示範囲は異なる
316.00→544.00
前年比 +72.2%各社の開示範囲は異なる
エネルギー系事業利益(参考、億円) 1,053.00→1,901.00
前年比 +80.5%各社の開示範囲は異なる
1,022.00→1,033.00
前年比 +1.1%各社の開示範囲は異なる
未取得(0ではない) 39.00→418.00
前年比 +971.8%各社の開示範囲は異なる
未取得(0ではない)
会社定義の基礎営業CF等(億円) 4,463.00→7,281.00
前年比 +63.1%営業収益CF(会社独自定義)
4,485.00→5,116.00
前年比 +14.1%基礎営業CF(会社独自定義)
未取得・統一指標ではない 未取得・統一指標ではない 未取得・統一指標ではない
有価証券関連損益(参考、億円) 398.20→1,049.48
前年比 +163.6%
274.63→1,186.00
前年比 +331.9%
1,360.30→442.68
前年比 −67.5%
未取得 未取得

補足:会社別の実取得セグメントKPI(単純順位比較不可)

全社で統一可能な「資源セグメント利益」「非資源比率」は、各社のセグメント境界と利益定義が異なるため、そのまま横並びできない。各社公式資料の主な親会社帰属利益ベースの事業別増減を、あくまで企業内の変化として示す(セグメント数値は会社資料の億円丸め)。

企業/開示事業 前年→当期(億円) 解釈
三菱商事・金属資源 466→1,358(+892) 事業区分が会社ごとに異なるため他社の同名部門と直接順位比較しない。
三菱商事・エネルギー&パワーソリューション 1,053→1,901(+848) 事業区分が会社ごとに異なるため他社の同名部門と直接順位比較しない。
三井物産・金属資源 1,143→1,397(+254) 事業区分が会社ごとに異なるため他社の同名部門と直接順位比較しない。
三井物産・エネルギー 1,022→1,033(+11) 事業区分が会社ごとに異なるため他社の同名部門と直接順位比較しない。
三井物産・モビリティ・デジタル 1,027→1,537(+510) 事業区分が会社ごとに異なるため他社の同名部門と直接順位比較しない。
伊藤忠商事・事業別主要KPI 今回の共通定義では未取得 企業内前年比の資料再照合を継続。欠損を0としない。
丸紅・金属 522→894(+372) 事業区分が会社ごとに異なるため他社の同名部門と直接順位比較しない。
丸紅・エネルギー・化学品 39→418(+379) 事業区分が会社ごとに異なるため他社の同名部門と直接順位比較しない。
丸紅・食料・アグリ 413→400(-13) 事業区分が会社ごとに異なるため他社の同名部門と直接順位比較しない。
丸紅・金融・リース・不動産 1,257→427(-830) 事業区分が会社ごとに異なるため他社の同名部門と直接順位比較しない。
住友商事・資源 316→544(+228) 事業区分が会社ごとに異なるため他社の同名部門と直接順位比較しない。
住友商事・自動車 534→235(-299) 事業区分が会社ごとに異なるため他社の同名部門と直接順位比較しない。
住友商事・輸送機・建機 403→499(+96) 事業区分が会社ごとに異なるため他社の同名部門と直接順位比較しない。

持分法投資損益(百万円原表から換算):
三菱商事 2,368.51→2,879.88億円/三井物産 2,523.17→2,921.83億円/伊藤忠商事 1,602.39→2,305.02億円/丸紅 1,597.33→1,987.86億円/住友商事 1,595.96→1,658.61億円
。これは事業別利益とは別軸。持分法会社の売上・営業利益を連結の同じ行へ足すことはしない。

ROEは半期累計利益の年率換算方法・平均自己資本の範囲・資本構成等が統一できる一次開示を照合しきれていないため、本稿の5社横並び表には採用していない(未取得・定義確認待ち)。事業セグメントの定義と比較期間にも組織改編・遡及組替があり、各社の開示対象範囲に従う。

会社独自のCF指標:三井物産「基礎営業CF」は前年4,485→当期5,116億円(営業CFは4,287.11→2,234.01億円)。三菱商事「営業収益CF」は4,463→7,281億円(営業CFは4,280.25→9,912.76億円)。前者は運転資金等の調整、後者は会社定義の別指標であり、5社共通の営業CFと混同しない。伊藤忠・丸紅・住友商事の対応する同一定義の基礎CFは横並び比較不可。

4.営業キャッシュフローの質

5社とも純利益は増益だが、営業CFは三菱4,280.25→9,912.76億円・丸紅2,114.06→2,646.65億円で増加、三井4,287.11→2,234.01億円、伊藤忠6,092.45→2,931.75億円、住友2,621.64→1,305.12億円で減少。現金への転換は純利益の伸びとは異なる。営業CFマージンと前年差を先の表で比較した。

運転資金の回収・支払、持分法投資先からの受取配当、納税、非経常的な事業売却・評価益、会社定義の基礎CFの範囲を分けて検証する。営業CFから金額を特定できない要因は推定配分しない。

5.通期予想と進捗・下期必要利益

比較項目 三菱商事
8058
三井物産
8031
伊藤忠商事
8001
丸紅
8002
住友商事
8053
通期親会社利益予想(億円) 11,000.00→12,000.00
前年比 +9.1%
9,200.00→10,500.00
前年比 +14.1%
9,500.00→9,500.00
前年比 +0.0%
5,800.00→6,300.00
前年比 +8.6%
6,300.00→6,700.00
前年比 +6.3%
中間進捗率 51.6% 54.7% 61.1% 53.7% 51.9%
下期必要親会社利益(億円) 5,803.04 4,751.38 3,695.28 2,919.73 3,221.35

進捗は中間親会社利益÷最新通期予想、下期必要利益は通期予想−中間実績の算術値であり、季節性や一過性要因を除いた予測ではない。

会社が公表する通期の「親会社所有者帰属利益」予想に統一。進捗率は中間実績÷最新通期予想、下期必要利益は最新予想-中間実績。下期の季節性・一時損益や追加投資を無視した達成可能性の判定ではない。

企業 前回→最新通期予想(億円) 修正 中間進捗 下期必要額(億円)
三菱商事 11,000→12,000 +1,000億円(+9.1%) 51.6% 5,803.04
三井物産 9,200→10,500 +1,300億円(+14.1%) 54.7% 4,751.38
伊藤忠商事 9,500→9,500 +0億円(+0.0%) 61.1% 3,695.28
丸紅 5,800→6,300 +500億円(+8.6%) 53.7% 2,919.73
住友商事 6,300→6,700 +400億円(+6.3%) 51.9% 3,221.35
5大商社の営業キャッシュフローマージンと最新通期利益見通しを比較した図
比較図②:営業CFマージンと通期親会社帰属利益予想。

6.会計士の読み方/次に追うKPI

①資源・非資源と一時利益の質:資源価格だけでなく有価証券売却・評価益、持分法投資利益、税効果、連結範囲変更を分離する。最終利益の伸びを営業利益の伸びと取り違えない。②現金への転換:三井・伊藤忠・住友は営業CFが減少しても純利益は増加。運転資金、配当受領、税金、リース関連の区分を通期で追う。会計方針や報告区分が異なる会社指標のCFは注釈付きで判断する。

次の確認点:各社の資源価格感応度と非資源セグメントの利益成長率、ならびに営業CF/会社独自基礎CFの差が下期に縮小するか。KPIは公式資料にある情報のみ採用し、比較定義が一致しない場合は「定義不一致で比較不可」と扱う。

7.一次資料・比較の限界

  1. 三菱商事(8058)2027年3月期中間決算短信(2026-11-04 14:00公表):原資料PDF
  2. 三井物産(8031)2027年3月期中間決算短信(2026-11-04 12:00公表):原資料PDF
  3. 伊藤忠商事(8001)2027年3月期中間決算短信(2026-11-04 13:00公表):原資料PDF
  4. 丸紅(8002)2027年3月期中間決算短信(2026-11-04 11:00公表):原資料PDF
  5. 住友商事(8053)2027年3月期中間決算短信(2026-11-02 13:00公表):原資料PDF

確認時点:2026年11月4日19時台(日本時間)。数字の比較対象は2025年4~9月と2026年4~9月の累計連結。各社の収益純額/総額、営業利益の表示採用、事業区分、CF分類、株式分割によるEPS再表示を確認して利用する。正式な訂正開示が出た場合は当該項目を更新する。2026年11月4日の新規決算資料を基準にし、将来の資料修正を先読みしない。

本記事は会計・決算情報の解説であり、個別株式の売買推奨ではありません。厳格/次点/参考良好の判定は、個社の既存検証済みデータを再照合するまで未掲載。業界比較を使って新規判定を作りません。

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