結論:同じ2026年4~9月の半導体関連装置3社決算を比べると、売上高の伸びは東京エレクトロン(+41.3%)が最大、営業利益率はディスコ(45.4%)が最高でした。SCREENも増収増益ですが、営業CFは▲19.13億円。利益の伸びと現金回収を分けて読む必要があります。
対象は東京エレクトロン(8035)・SCREENホールディングス(7735)・ディスコ(6146)の2027年3月期中間決算(2026年4月1日~9月30日)。3社とも日本基準・連結、各社正式決算短信の百万円値から比較表を作成しました。これは「連結全社」の比較であり、装置の同一製品・同一工程だけの利益率競争ではありません。
1. 3社の決算を横並びで比較
| 企業(コード) | 売上高(億円) | 増収率 | 売上総利益(億円) | 粗利率(前年差) | 営業利益(億円) | 営業増益率 | 営業利益率(前年差) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 東京エレクトロン(8035) | 16,674.55 | +41.3% | 7,901.02 | 47.4%(+1.7pt) | 5,067.76 | +67.2% | 30.4%(+4.7pt) |
| SCREEN HD(7735) | 3,084.53 | +12.5% | 1,147.45 | 37.2%(+0.0pt) | 545.23 | +17.4% | 17.7%(+0.7pt) |
| ディスコ(6146) | 2,570.58 | +32.1% | 1,839.17 | 71.5%(+2.7pt) | 1,166.39 | +47.9% | 45.4%(+4.8pt) |
売上総利益率=売上総利益÷売上高、営業利益率=営業利益÷売上高。前年差の「pt」は百分率のポイント差。金額は原資料の百万円値を億円に換算し小数第2位まで表示、増減率と利益率は小数第1位で丸めています。SCREENの粗利率前年差は厳密には約+0.05ptで、表示上+0.0ptとなります。
売上成長率(前年同期比)
41.3%
12.5%
32.1%
営業利益率(連結全社)
30.4%
17.7%
45.4%
2. 純利益・EPS・キャッシュフロー・会社見通し
| 企業 | 親会社帰属中間純利益(億円) | 基本EPS(円) | 営業CF(億円) | 会社公表の見通し |
|---|---|---|---|---|
| 東京エレクトロン | 3,769.29 | 166.13 | 未確認 | 通期売上3兆7,000億円/営業利益1兆1,690億円(修正あり) |
| SCREEN HD | 376.56 | 199.06 | ▲19.13 | 通期売上7,430億円/営業利益1,565億円(据置き) |
| ディスコ | 803.66 | 740.84 | +1,117.08 | 4~12月累計売上3,895億円/営業利益1,747億円(12か月通期予想なし) |
EPSの大小は株価や投資魅力度の順位を示しません。東京エレクトロンは2026年10月1日の1対5株式分割を遡及反映し、SCREENは2026年4月1日の1対2株式分割を遡及反映した各社短信の基本EPSを掲載しています。ディスコは同短信の基本EPSです。
営業CFについて:SCREENは▲19.13億円(前年同期+308.34億円)で、棚卸資産の増加や税金支払などが影響。ディスコは+1,117.08億円(前年同期+396.83億円)で、税前利益と契約負債増加が主因と説明しています。東京エレクトロンの営業CFは今回照合した短信から確定できなかったため「未確認」とし、ゼロにはしていません。全社のCF率ランキングは作りません。
予想の対象期に注意:東京エレクトロンとSCREENは2027年3月期12か月通期予想、ディスコは2026年4~12月の9か月累計予想を公表。ディスコの数字を通期予想と呼んだり、通期進捗率の同列比較には使用しません。
3. どこに明暗があるのか
東京エレクトロン:売上41.3%増に対し営業利益67.2%増
半期売上高は1兆6,674.55億円、営業利益は5,067.76億円。売上総利益率は45.7%から47.4%、営業利益率は25.7%から30.4%へ改善しました。売上拡大以上に利益が伸びています。一方、売上規模が最大でもディスコより営業利益率は低く、設備投資の波・製品構成・コスト構造の違いを区別して読む必要があります。10月30日の短信では通期売上高3兆7,000億円、営業利益1兆1,690億円の予想が示され、従来予想から修正ありとされています。
個別の背景は東京エレクトロンの決算個別分析も参照。
SCREEN:増益でも営業CFはマイナス
売上高は3,084.53億円(+12.5%)、営業利益545.23億円(+17.4%)、営業利益率17.7%。営業CFは▲19.13億円で、利益が現金として同じ時期に回収されていないことが重要です。ただしこれだけで利益の質を断定的に否定できるわけではなく、在庫、前受・契約負債、債権回収の次期推移が判断材料になります。通期会社予想は売上高7,430億円、営業利益1,565億円で据え置き。
SCREENは半導体製造装置SPE以外にもGA・FT・PE等の事業を含み、本記事の粗利率37.2%は連結全社率です。SPEセグメントだけの売上総利益率を示すものではありません。個別の背景はSCREENの決算個別分析を参照。
ディスコ:営業利益率45.4%、営業CFも大幅増
売上高2,570.58億円(+32.1%)、営業利益1,166.39億円(+47.9%)。粗利率は71.5%、営業利益率45.4%で、ともに3社の連結全社比較では最高です。公式短信は生成AI・データセンター投資の継続、先端ロジックやHBM向けの高性能半導体需要、精密加工装置・加工ツールの出荷好調を説明しています。営業CFは+1,117.08億円。もっとも工程、製品の採算構造と利益認識時点が他の2社とは異なるため、この比率差だけで一方が優秀と断定しません。
4. 会計士の視点:何を横並びにしてはいけないか
今回の比較の価値は、増収・増益・利益率・キャッシュ回収が同じ動きをしていない点にあります。東京エレクトロンは増収以上の利益拡大、ディスコは高い収益性と強い営業CF、SCREENは増益の一方で営業CFがマイナス。各社の事業領域、顧客向け製造工程、消耗品比率、受注・在庫・債権の回転が異なるため、全社利益率のランキングを製造装置単一セグメントのランキングと誤読しないことが重要です。
特にSCREENのSPE事業の売上総利益は本件短信で個別開示を確認できず、全社売上総利益をSPEの利益とみなせません。ディスコの半期報告書では単一報告セグメントとされていますが、製品別粗利・営業利益まで開示されているわけではありません。
5. 次に確認したいこと
各社の次期決算では、①受注・出荷と売上計上の時間差、②半導体設備投資の地域・用途別の強弱、③高付加価値品と消耗品の構成変化、④棚卸資産・契約負債と営業CFの改善、⑤通期会社予想の修正を追います。次の主要企業の正式決算が出た際には同一対象期の比較範囲を拡張し、本記事を更新します。
6. 判定・一次情報・比較上の注記
万次郎の「厳格・次点・参考良好」は各社ごとに発表前の市場予想・会社予想等との照合を要する独立判定です。今回の横並びランキングはその判定の代わりではありません。最新DBの3社同一期間について判定結果を一括再照合できていないため、根拠のない判定ラベルや連続回数を付していません。
一次資料:東京エレクトロン 中間決算短信(2026年10月30日)/SCREEN 中間決算短信(同日)/ディスコ 中間決算短信(2026年10月22日)。比較対象は2026年4月1日~9月30日、前年2025年4月1日~9月30日。売上・利益は百万円単位原値をもとに作表。出所を確認した事実と、会計上の解釈を区別しています。
記事確認:2026年11月1日(日本時間)。対象3社の正式決算公表後に作成。公開後の訂正や追加資料が確認された場合は追記・更新します。実績を投資成果や将来株価の保証とするものではありません。
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