休日の企業研究 01
東京ディズニーリゾートで過ごす休日と、街で見つけるサンリオのコラボ商品。どちらもキャラクターの人気が支えています。ただ、企業が利益を得るまでの道筋は大きく違います。
2026年3月期の連結営業利益率は、オリエンタルランドが23.9%、サンリオが40.1%。差は16.2ポイントあります。この数字を、施設運営、ライセンス、費用、現金の使い方に分けて読み解きます。[S1] [S4]
OLCは、施設で提供する体験の価値を客単価と宿泊収入につなげる商売。サンリオは、物販に加え、他社の商品やサービスにキャラクターを広げて使用料を得る商売です。利益率の差には、売上の中身と事業構成の違いが表れています。
比較条件: 2026年3月期の通期・連結・日本基準。親会社の対象期間は2025年4月1日〜2026年3月31日。サンリオの海外連結子会社は2025年1〜12月が対象のため、暦期間は完全には一致しません。最新四半期の業績順位ではなく、確定した通期決算から商売の仕組みを読む番外編です。[S4]
施設の体験とキャラクターの使用料
オリエンタルランドは東京ディズニーリゾートを運営し、アトラクション・ショー、商品販売、飲食、宿泊などから収入を得ています。ディズニー社と長期のライセンス契約を結んでおり、ディズニーのキャラクターを自社で生み出し保有する会社とは立場が異なります。[S2] [S8]
サンリオはキャラクターを使った自社商品を売るほか、他社にキャラクターの使用を許諾し、ロイヤリティを受け取ります。ライセンス先の商品代金すべてがサンリオの売上になるわけではありません。また、サンリオピューロランドやハーモニーランドを運営するため、純粋なライセンス専業でもありません。[S4] [S9]
施設の運営には建物や設備、人員、保守が必要です。ライセンスでは他社の製造・販売網も活用できます。この構造差は投資負担や収益性を考える手がかりですが、実際の差をどこまで説明できるかは、決算とKPIで確かめる必要があります。
同じ年度の数字に表れた違い
| 2026年3月期 | オリエンタルランド | サンリオ |
|---|---|---|
| 売上高 | 7,045.4億円 前年比+3.7% |
1,940.9億円 前年比+33.9% |
| 営業利益 | 1,684.1億円 前年比△2.1% |
778.6億円 前年比+50.3% |
| 粗利率 | 40.2% → 38.7% | 75.8% → 77.3% |
| 営業利益率 | 25.3% → 23.9% | 35.8% → 40.1% |
矢印は2025年3月期 → 2026年3月期。率は開示された百万円単位の原数値から算出。出所:両社決算短信。[S1] [S4]
売上規模はOLCが約3.6倍、営業利益額は約2.2倍。一方、売上に対して残る営業利益の割合はサンリオが高い。この二つは両立します。さらに、OLCは増収減益、サンリオは売上を上回るペースで増益となった理由に注目します。
OLCは客単価の上昇を費用増が上回った
| 事業KPI | 2025年3月期 | 2026年3月期 | 変化 |
|---|---|---|---|
| 入園者数 | 2,755.8万人 | 2,753.4万人 | △0.1% |
| ゲスト1人当たり売上高 | 17,833円 | 18,403円 | +3.2% |
| ディズニーホテル客室稼働率 | 95.7% | 94.7% | △1.0pp |
| 同平均客室単価 | 64,886円 | 69,591円 | +7.3% |
入園者数・ゲスト単価は2パーク、ホテル指標は資料指定のディズニーホテル6施設が対象。各KPIはOLC固有の定義で、サンリオのロイヤリティ収入と直接比較する指標ではありません。[S2]
入園者数はほぼ横ばいでも、ゲスト1人当たりのアトラクション・ショー、商品、飲食の各収入が増えました。会社はディズニー・プレミアアクセスや高価格帯チケットの構成比上昇、関連商品の販売などを説明しています。客単価の上昇を、そのまま一律のチケット値上げの効果と捉えることはできません。[S3]
ただしテーマパーク事業では、人件費の増加と諸経費の増加が、それぞれ約112億円の減益要因となりました。ホテルは客室単価の上昇などで増益でしたが、テーマパークの減益を補いきれませんでした。[S3]
連結の損益をつなぐと、売上は251.65億円増加した一方、粗利益は2.34億円減少。販管費が34.64億円増加した結果、営業利益は36.98億円減りました。売上の増加だけでは、利益が増えたとは判断できない決算です。この増減は会計数値の橋渡しであり、各要因の厳密な寄与額を独自推計したものではありません。[S1]
サンリオは粗利益が販管費を上回って伸びた
| 事業KPIと費用率 | 2025年3月期 | 2026年3月期 | 変化 |
|---|---|---|---|
| 外部顧客向けロイヤリティ売上高 | 707.38億円 | 964.24億円 | +36.3% |
| 同売上高 ÷ 連結売上高 | 48.8% | 49.7% | +0.9pp |
| 販管費率 | 40.1% | 37.2% | △2.9pp |
ロイヤリティは決算短信のセグメント情報にある外部顧客向けの合計で、グループ内取引は含めません。構成比・費用率は当方算出。[S4]
ロイヤリティは連結売上の約半分を占め、売上全体の33.9%を上回る36.3%の成長でした。会社は複数キャラクターの活用、国内ライセンスの拡大、中国の店舗網や欧州のファストファッション向け展開などを説明しています。一方、米州の貢献利益は前年比+1.4%にとどまり、地域差もあります。[S5]
粗利益は401.63億円増加し、販管費の増加141.10億円を吸収して、営業利益は260.53億円増加しました。費用を減らしたのではなく、売上・粗利益が費用より速く伸びたことが重要です。粗利率改善が約1.5ポイント、販管費率低下が約2.9ポイント寄与し、営業利益率は原数値ベースで約4.4ポイント改善しました。[S4]
ロイヤリティの売上構成比上昇は約0.9ポイントで、利益率改善のすべてを「ライセンス比率が上がったから」とは説明できません。商品・地域構成や費用の伸びも合わせて確認する必要があります。
現金の投資負担も分けて読む
| 2026年3月期 | オリエンタルランド | サンリオ |
|---|---|---|
| 営業CF | 1,812.81億円 | 525.54億円 |
| 有形・無形固定資産取得支出 | 836.04億円 | 56.78億円 |
| 同取得支出 ÷ 売上高 | 11.9% | 2.9% |
| 営業CF − 同取得支出 | 976.77億円 | 468.76億円 |
施設に継続投資するOLCと、ライセンス展開も活用するサンリオでは、当年度の固定資産取得支出にも差があります。ただし、これはCF計算書の有形・無形固定資産の現金支出の合計です。OLCが別途開示する設備投資額862.69億円とは計上時点・対象範囲が異なります。また、サンリオのマーケティングや人材への支出はこの取得支出にすべて含まれるわけではありません。[S1] [S2] [S4]
営業CFから取得支出を引いた額は当方の簡易的な資金指標で、企業買収や金融商品の売買、配当、借入返済などを含む残余現金ではありません。1年の投資額は計画や支払時期にも左右されるため、恒久的な投資負担の比率とは扱いません。
さらにサンリオの営業CFは、営業利益778.59億円より小さい525.54億円でした。法人税等の支払205.99億円、棚卸資産の増加による40.03億円の資金負担などがあります。高利益率でも利益が同じ額の現金になるわけではありません。[S4]
次に確認する指標
OLCはゲスト1人当たり売上高と、運営費の増減。単価が上がっていても、そのために必要な人件費、保守、システムなどの費用を吸収できるかを追います。サンリオはロイヤリティ収入と、販管費の伸び。キャラクターの人気が地域や商品分野をまたいで広がり、費用を吸収できる成長につながるかを見ます。
身近なキャラクターの人気を、売上、利益、現金までつなげて見る。そこまで読むと、同じ「人気企業」の違いが見えてきます。
2027年3月期の会社予想は別枠で確認
以下は2026年11月3日時点で確認した通期会社予想です。通期実績の比較に、異なる四半期の実績を混ぜていません。
| 項目 | オリエンタルランド | サンリオ |
|---|---|---|
| 予想の公表日 | 2026年10月29日 修正 | 2026年8月10日 据え置き確認 |
| 売上高予想 | 7,633.34億円 前年比+8.3% |
2,298.00億円 前年比+18.4% |
| 営業利益予想 | 1,854.65億円 前年比+10.1% |
895.00億円 前年比+15.0% |
| 営業利益率予想 | 24.3% | 38.9% |
| 期初予想からの変更 | 売上+390.22億円 +5.4% 営業利益+246.89億円 +15.4% |
売上・営業利益とも変更なし |
| 最新実績の営業利益と通期進捗 | 4〜9月累計 784.97億円 42.3% |
4〜6月累計 224.35億円 25.1% |
| 通期予想に必要な残期間営業利益 | 10〜3月 1,069.68億円 | 7〜3月 670.65億円 |
出所:OLC中間期補足資料、サンリオ第1四半期決算短信。営業利益率・進捗・必要利益は当方算出。進捗の期間が異なり、季節性もあるため、両社の達成確度の順位には使いません。サンリオの営業利益は連結調整前の888億円ではなく、報告営業利益の895億円で統一。[S6] [S7]
主要財務と率の全比較表を開く
金額とEPSの前年比較
| 項目 | オリエンタルランド | サンリオ | ||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 前年 → 当期 | 増減額 | 前年比 | 前年 → 当期 | 増減額 | 前年比 | |
| 売上高(億円) | 6,793.7 → 7,045.4 | +251.7 | +3.7% | 1,449.0 → 1,940.9 | +491.8 | +33.9% |
| 売上総利益(億円) | 2,731.9 → 2,729.6 | △2.3 | △0.1% | 1,099.0 → 1,500.6 | +401.6 | +36.5% |
| 販管費(億円) | 1,010.8 → 1,045.5 | +34.6 | +3.4% | 580.9 → 722.0 | +141.1 | +24.3% |
| 営業利益(億円) | 1,721.1 → 1,684.1 | △37.0 | △2.1% | 518.1 → 778.6 | +260.5 | +50.3% |
| 親会社帰属純利益(億円) | 1,241.6 → 1,218.8 | △22.8 | △1.8% | 417.3 → 546.1 | +128.8 | +30.9% |
| 営業CF(億円) | 1,953.9 → 1,812.8 | △141.1 | △7.2% | 408.2 → 525.5 | +117.4 | +28.8% |
| EPS(円) | 75.62 → 74.34 | △1.28 | △1.7% | 35.32 → 45.33 | +10.01 | +28.3% |
| 有形・無形固定資産取得支出(億円) | 1,027.0 → 836.0 | △190.9 | △18.6% | 38.0 → 56.8 | +18.7 | +49.3% |
収益性と資金指標
| 項目 | OLC 前年 → 当期 | 前年差 | サンリオ 前年 → 当期 | 前年差 | 当期の差 サンリオ − OLC |
|---|---|---|---|---|---|
| 粗利率 | 40.2% → 38.7% | △1.5pp | 75.8% → 77.3% | +1.5pp | +38.6pp |
| 販管費率 | 14.9% → 14.8% | △0.0pp | 40.1% → 37.2% | △2.9pp | +22.4pp |
| 営業利益率 | 25.3% → 23.9% | △1.4pp | 35.8% → 40.1% | +4.4pp | +16.2pp |
| 純利益率 | 18.3% → 17.3% | △1.0pp | 28.8% → 28.1% | △0.7pp | +10.8pp |
| 営業CFマージン | 28.8% → 25.7% | △3.0pp | 28.2% → 27.1% | △1.1pp | +1.3pp |
| 固定資産取得支出 ÷ 売上高 | 15.1% → 11.9% | △3.2pp | 2.6% → 2.9% | +0.3pp | △8.9pp |
すべて2025年3月期 → 2026年3月期。EPSは株価の割安度の比較指標ではありません。サンリオは2026年4月1日付の1対5の株式分割を遡及反映した値。金額・比率の計算は百万円単位の開示原数値から行い、表示時に四捨五入しています。サンリオの営業利益率前年差は原数値から+4.4pp。会社が表示済みの比率差で示す+4.3ppとは丸め方が異なります。粗利益−販管費などには原資料の百万円未満切捨てによる端数差があります。[S1] [S4]
出典と計算条件
- [S1] オリエンタルランド 2026年3月期 決算短信
2026年4月28日/冒頭1頁、添付p.7・11
https://www.olc.co.jp/ja/news/news_olc/auto_20260427511455/pdfFile.pdf - [S2] オリエンタルランド 2026年3月期 決算補足資料
2026年4月28日/PDF第2〜5頁、連結PL・テーマパーク/ホテル関連情報
https://www.olc.co.jp/ja/ir/reports/presentations/2025/main/01/teaserItems1/0/tableContents/02/multiFileUpload50/link/sh2026-04.pdf - [S3] オリエンタルランド 2026年3月期 決算説明資料
2026年4月28日/p.5〜7、売上・営業利益増減要因
https://www.olc.co.jp/ja/ir/reports/presentations/2025/main/01/teaserItems1/0/tableContents/03/multiFileUpload50/link/sp2026-04.pdf - [S4] サンリオ 2026年3月期 決算短信
2026年6月23日/冒頭1頁、添付p.3・10〜11・15・18〜19・22
https://monex-open-disclose.ifis.co.jp/7f8/140120260623576716.pdf - [S5] サンリオ 2026年3月期通期 決算説明資料
2026年6月23日/p.8〜15、連結PL・ロイヤリティ・地域別動向
https://finance-frontend-pc-dist.west.edge.storage-yahoo.jp/disclosure/20260623/20260623576850.pdf - [S6] オリエンタルランド 2027年3月期 中間期 決算補足資料
2026年10月29日/PDF第3・6頁、実績・10月修正予想
https://www.olc.co.jp/ja/ir/latest/main/01111111114/teaserItems2/0/linkList/04/link/sh2027-02.pdf - [S7] サンリオ 2027年3月期 第1四半期 決算短信
2026年8月10日/冒頭の実績・通期予想(企業開示の転載)
https://financialfilings.com/filings/sanrio-company-ltd/earnings-release/2026/55126915/ - [S8] オリエンタルランド 統合報告書2025
2025年10月/トップメッセージ・価値創造プロセス、長期ライセンス契約
https://www.olc.co.jp/ja/ir/library/annual/main/018/teaserItems1/0/file/integrated_2025_ja.pdf - [S9] サンリオ 事業案内
閲覧日2026年11月3日/ライセンス・物販等の事業内容
https://corporate.sanrio.co.jp/corporate/business/
S4〜S5は企業作成の開示原本を配信サイトで閲覧、S7は企業作成の決算短信の転載を確認。発行企業の資料一覧:サンリオIRライブラリー。金額の比率はすべて対応する連結売上高を分母としています。会社説明と算術的な損益の増減を区別し、利益率差16.2ppの全額を特定の事業モデルだけに帰属させていません。
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